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前回に引き続きモータ内蔵ブレーキについて紹介いたします。

1.ブレーキの手動ゆるめ装置について

手動ゆるめ装置(ボルトのねじ込み式、レバー式)は、一時的にモータ軸を動く状態にすることで、 機械・装置の位置合わせなどを行う装置です。

ご注意) 三相モータ0.4kW以下、インバータ用モータ0.2kW以下の標準ブレーキには、 手動ゆるめ装置は装備されていません。オプションとなります。

例えば、ねじ込み式の場合は先が円錐状の専用のボルトをねじ込むことで、 可動鉄心を押し当てているライニングから機械的に引き離す構造になっています。 可動鉄心が正しくライニングから引き離せるように、対角の2箇所に手動ゆるめ用ボルトが 配置されています。

これらは一時的なブレーキ解放のための機構です。

手動解放したままモータを高速で運転したり、機械・装置を運転継続することは、おやめください。

想定外のブレーキ動作などが生じた場合に、機械・装置の急停止、破損事故などの危険があります。

ブレーキの必要がなくなった場合には、ブレーキ装置の解除、改造など、当社サービス部門への ご相談をお願いいたします。

2.ブレーキが解放できない事象について

まず、電源のON/OFFによるブレーキの作動音を確認してください。

周囲環境の騒音にもよりますが、作動音が確認できない場合、ブレーキが解放動作していない 可能性があります。電源電圧、配線、駆動回路には問題なく、整流器に正しく電圧が印加 されている場合、よくある原因として次の3点があります。

1)整流器の故障の場合

落雷など、瞬間的な高電圧であるサージ電圧が加わった場合、整流器の破損に至る場合があります。

整流器内部の回路が切断、解放されると、電流も流れず、外観上から故障の有無が分からないことも 多いです。テスターなどで端子間の電圧極性毎の導通/非導通の確認が必要です。

2)ブレーキギャップが限界値以上に広がった場合

ブレーキの使用が重なると、ライニングが摩耗していくため、その分ギャップが広がります。

ブレーキギャップが限界値を超えると可動鉄心と電磁石の距離が広がり、可動鉄心への電磁石の 吸引力が下がるため、ライニングを解放できなくなります。取扱説明書に従い、規定値になるよう ギャップ調整を行ってください。なお、ギャップが周囲数カ所、均等になっていることも 確認してください。

3)コイルの故障の場合

1)、2)に問題がない場合は、ブレーキコイルの故障が原因の場合があります

この場合はコイル抵抗値を測定してください。内部で切断されていると抵抗値は無限大になります。

正常な抵抗値については形式、仕様により異なりますので個別にご照会ください。

3.旧モータから新モータへの変更に伴うモータブレーキの変更について

モータブレーキの変更により、ブレーキ特性が変わる場合があります。

最近ではプレミアム効率モータ(IE3モータ)への変更に伴い、ブレーキ特性も変更されています。

1)インバータ用モータと組合せたブレーキのトルクの変更

効率規制以前の従来のインバータモータの場合、同標準モータと比べ、1サイズ大きいブレーキと 組合せていました。

インバータ用プレミアム効率モータでは、プレミアム効率モータと同じブレーキとの組み合わせと なるため、ブレーキトルクは従来と比べ下がりますが、モータ定格トルクの150%以上の十分な ブレーキトルクは確保されています。

一般的に、インバータ駆動のモータでは回転速度を落としてからブレーキを動作させているため、 ブレーキトルクの差による停止位置の差は大きくはありませんが、旧モータから新モータへの交換後は、 停止位置のご確認などお願いいたします。

2)ブレーキの動作遅れ時間の変更

プレミアム効率モータのブレーキは、従来に比べ、特に普通制動回路でご使用の場合の動作遅れ 時間が大きくなります。高回転からのブレーキによる停止の場合、停止位置のずれやばらつきが 大きくなることがあります。ばらつきを小さくするためには普通制動回路の別切回路や、 急制動回路にすると遅れ時間が改善されますので、カタログなどで特性値をご確認の上、 ご検討ください。

  • 例:

    3.7kW用ブレーキ:普通制動(同時切回路)/普通制動(別切回路)/急制動回路

  • 従来モータ用 (形式FB-5D):0.4秒~0.5秒/0.2秒~0.25秒/0.01秒~0.02秒
  • プレミアム効率モータ (形式FB-5E):1.1秒~1.3秒/0.4秒~0.5秒/0.02秒~0.04秒

ブレーキも減速機、モータと合わせ、定期的な点検やメンテナンスを行い、 安心して長くご使用いただきますよう、お願いいたします。

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