住友重機械工業株式会社 PTC事業部

PTCワールドワイド 住友重機械工業株式会社

2015年4月以降、IE3プレミアム効率モータをインバータ運転するケースでトラブルのお問い合わせがあります。
その内容は、「IE3モータ付ギヤモータをインバータ運転しているが、無負荷運転にもかかわらずモータ定格電流値を超えて、オーバーロードになりモータが加速できない」のというものです。
「従来のIE1モータで運転していた時点では問題なかったが、IE3モータで急にこの現象が発生した。」この様なお問い合わせが増えています。
この結論としては、「インバータのトルクブースト補償値を大幅に下げて運転する」事で多くは解決できます。

では、この原因と理由はどの様なことかご紹介いたします。

現在国内で販売されているインバータは特殊用(d2G4など)を除く汎用タイプはインバータのパラメータの初期設定はまだ従来の汎用モータ(IE1モータ)を運転する想定でトルクブースト値を設定しています。
この設定値がIE3モータではトラブルの原因となってしまいます。

IE1モータの小容量帯では始動時や10Hz以下のトルク不足を解消するために、トルクブースト値を上げ(補償電圧値を上げる)て運転します。
皆さんご存知のブースト調整ですが、これはIE1モータの0.1~2.2kWではモータ内部での巻線(1次抵抗)での電圧降下が多く、このため回転子に加わる電圧がV/f(V/E)運転での正しい電圧になるように補正します。この補償がトルクブーストです。

IE3モータはこのモータ内部の電圧量が少なく、補償量も少なくて済みます。
これをIE1用の補償量で運転すると、モータは過励磁状態となり無負荷電流が大幅に増加して過電流を引き起こします。

この過励磁状態を引き起こしている過補償のトルクブーストを下げることでIE3モータの特性に合った設定になります。

現在のインバータはその出力波形も基本波成分の含有量が多くトルクブーストを下げた状態でも始動トルクや定速時のトルクが得られます。
また、インバータによってはオートチューニングを行いモータに対してセンサレスベクトル制御などの最適設定を行うことも可能です。但しオートチューニングはインバータによりチューニング方法が異なりますので、メーカまでお問い合わせください。

用語解説

■ トルクブースト
電動機の固定子巻線の抵抗分による電圧降下による定速時のトルク低下を補うために低周波数領域のV/fを大きく(電圧を上げる)する機能です。
出力トルクは電圧の2乗に比例し、特に始動時、10Hz以下でモータに印加する電圧に電圧降下が生じると始動トルクの低下、過電流を引き起こしますが、逆に電圧が高くなると過電流、過負荷の原因となります。
一般にV/f制御運転で機械の負荷状態や配線距離等で状況に合わせ調整します。

SHI-Direct 2014/10、2015/03の技術情報に IE3モータの特性の違いとインバータの制御について解説しておりますのでそちらも合わせてご覧ください

■Vol.1410 トップランナーモータ(IE3モータ)のインバータ運転

■Vol.1503 減速機の補助形式AVからAPへ:インバータをそのままにモータ付減速機のみ置換えた際のインバータV/F制御運転での注意点

キーワードで探す