住友重機械工業株式会社 PTC事業部

PTCワールドワイド 住友重機械工業株式会社

400Vの三相交流電動機をインバータ駆動する場合の注意点とその対策

近年のインバータを400V三相誘導電動機で駆動した場合、モータの絶縁破壊のトラブルが起こる場合あります。すでに経験された方もおられるかもしれません
インバータが市場に出始めたころのインバータと最新のインバータは内部に使用されているパワー素子が大きく変化してきています。以前の技術情報でもお話いたしましたが、素子の高性能化に伴い小形&高性能をもたらしましたが、その反面で使用時に注意すべき項目が出てきました。
モータを運転するときに発生していた運転音も静音運転が可能となりましたがこの静音化と小型化の裏に400V級モータの絶縁破壊という問題が出てきました。

本文に入る前に
このマイクロサージによる絶縁破壊は頻繁に発生すると言うものでは有りませんが、既設の400V級三相汎用モータを最新のインバータで運転する際に特に考慮していただくことをお勧めいたします。
統計上の発生件数は僅かと言うデータも公表されていますが、現象とその発生メカニズムを知っていただくことで事前にトラブルを防ぐことが出来ます。
新規設備では、前もって絶縁強化されたモータをご利用いただくことでほとんどの場合対策は可能です。


インバータはコンバータ部(入力側の交流-直流変換部)で平滑された直流電源をインバータ部で高速チョッピングしPWM波形を作り出すわけですが、このとき旧タイプのインバータは「いかにもインバータで運転しています!」という音色を発します。このタイプの物は一般に2~3kHZの速さで直流電源をチョッピング(ON-OFF)しています。
この当時のインバータで400V級のモータを駆動した場合は、近年ほど絶縁破壊の問題は出ていませんでした。一部にプラント等で長距離配線を行う場合、インバータ専用のモータを適用し対策を行うなど経験されたことも記憶に有りませんか?
これは、長距離によるサージ電圧の発生が主たる原因でした。
近年トラブルを起こしているインバータはいわゆる「静音タイプ」の物で使用されている素子、チョッピング周波数(キャリア周波数)が異なります。
具体的には10~15kHzで運転され静穏を実現しています。
高キャリア周波数化と小型化のため、トランジスタのON-OFF立上り時間が短くなり、短い配線でもサージ電圧が立ち易くなっています。
近年のインバータで400V級のモータを運転した場合に起こる絶縁破壊は少々その原因が複雑になってきています。

現象とその対策と原因

トラブル

1.400V級の汎用三相誘導電動機を最新のインバータで運転した場合20m程度の配線長でモータが絶縁破壊を起こし損傷した。

2.設備の更新で従来使用していたインバータを最新の物に置き換えて運転したら今まではトラブルは発生しなかったのにモータの絶縁破壊が起きた。 

3.インバータ運転用の専用モータを使用しているのに、絶縁破壊を起こしてしまった。


対策

1.400V級のモータでインバータ運転をする場合は、絶縁を強化した対策モータを使用する。
・400V級のインバータ運転専用モータを採用する住友のインバータモータ(AFモータ)は絶縁対策仕様です。
・400V級の標準モータをインバータ運転する場合は、絶縁対策を指定ください。
*必ず、モータメーカの仕様を確認ください。

2.出力側に専用フィルタを挿入する。

3.配線長が長い場合1、2以外にもキャリア周波数の変更(周波数を下げる)
*設定キャリア周波数はメーカに御相談ください。


原因

400V級の交流モータを最近のインバータで駆動するとモータの1次側巻線の巻き始め数ターンにマイクロサージ電圧が掛かります。
この現象は、インバータの出力回路に使用している素子のスイッチグ速度の差により異なり、初期のバイポーラトランジスタ~IGBTと素子の変遷のなかで、電圧の立上り速度(di/dt)は早くなっています。
つまり高性能な素子の出現とマイクロサージ電圧の問題はつながっているという事です。

マイクロサージ電圧は、440V電源のインバータ運転の場合インバータの整流後の電圧(DCリンク電圧440V × √2 ≒ 620V )に対し、モータの巻線端で約2倍の値となり、約1200Vまで上昇します。
この高いサージ電圧により絶縁破壊が生じるものです。

初期の絶縁破壊は巻線端に小さな絶縁破壊が生じ、これによりインバータの過電流検出トリップが起こるようになります。この状態は進行し絶縁破壊の部分が増してくるとやが地絡検出等が出ます。この時点では最終段階になっています。
また、この様な現象は新規設備でも起こり設備稼働の初期(2~3ケ月)で発生することが多く判断の一つになります。

また、長距離配線によるサージ電圧は従来型(旧形)インバータでも発生します。これはインバータとモータ間の配線で起こるインダクタンス(L)と浮遊容量(C)の存在が影響し、インバータの出力がLC共振を引き起こし、サージ電圧を生んでしまいます。
この様な場合はその配線距離が原因の1つとなる為この原因にあわせた対策が必要となります。
一般には、インバータのキャリア周波数変更と場合により出力側フィルタの挿入が検討されます。
多くの場合配線距離の検討の目安としては20mになります。
事前に長距離配線が考えられる場合、モータの絶縁強化をまず検討の上採用されることを推奨いたします。

特異な例としては、大需要家の電源設備等で工場の動力使用状況が大きく変化し、全体の負荷率が下がった場合、電源電圧が基準電圧より高くなる場合があります。この様なケースでは更に先ほどの最大電圧も更に少し上昇します。
この様な状況が頻繁に繰り返され配線インピーダンスも低く抑えれられた設備の場合、インバータの一次側の電圧に対しての検討も行わなければなりません。
この様な場合はメーカまで御相談ください。

注意)特に既設の400V級モータをインバータ駆動される場合は必ず事前の検討を行ってください。

参考資料

http://www.cyclodrive.com/newsmail/mail_info_200510.pdf
<400V級インバータで汎用モータを駆動する場合の絶縁への影響について>(社団法人日本電気工業会)

キーワードで探す